銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「慣れてる?」

詳しい説明を求めるように聞き返せば、彼女は急にマズイって顔で慌てて言葉を濁す。

「な……なんでもないわ」

そして、急に黙り込み、俺を置いてスタスタと歩き出すセシル。

……妖しい。何を隠しているのか。

早足で追いついて、彼女に声をかける。

「これは宮殿に持って帰るのか?そんなに宮殿の食事は足りなかった?」

茶化すように質問すると、セシルはムッとした。

「違います!やっぱり、私が持つわ!」

彼女はそう言い張るが、俺は悪戯っぽく笑って首を横に振った。

「ダメだ。レディーにこんな重い物を持たせたら、俺の沽券にかかわる」

「レディー……ね」

どこか哀しげな目でセシルは意味ありげに呟き、フッと笑う。

何故だろう。

今、彼女をギュッと抱き締めたくなった。

自分を助けてくれた恩人だからだろうか?

彼女のそんな顔は見たくない。
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