銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
昔のように屈託無く笑っていて欲しい。

そんなことを考えていたら、セシルがまた歩き出した。今度は何も言わずについて行く。

次は、近くの菓子屋でキャンディーを両手にいっぱい買ったセシル。

そのキャンディーが入った袋も俺が持つと言ったが、「これは軽いから」と無表情で彼女は断った。

そして、横にいる俺を気にしながらも、セシルは王都の中心地から少し離れた方向へ迷わず進む。

途中から、彼女がどこへ向かっているのかわかった。

今歩いている道の向こうに、大きな柱廊に建つ白い二階建ての建物が見える。

そこはかつて俺が住んでいた場所。

……孤児院だ。

娼婦だった俺の母はたまたま娼館宿を訪れた父と恋に落ち俺を身ごもったが、働けなくなって孤児院に身を寄せたらしい。

母は俺を生んですぐに亡くなり、父が迎えに来る五歳の時までここで過ごした。
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