銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
ゴードンにそう伝えながら、セシルの腕を確認する。

矢で破れた袖は血で赤く染まっていた。

それを見て自分を責めずにはいられない。

俺を庇って彼女が傷を負った。

「こ、こんなの大丈夫」

彼女は強がって傷を隠そうとするが、「ダメだ。化膿したら大変なことになる」と厳しく言って懐から布を取り出して止血した。

自分が怪我をするのは慣れている。

だが、彼女となると動揺せずにはいられなかった。

いつもの自分ならもっと優しい言い方も出来たと思う。

だが、そんな余裕、今の俺にはなかった。

早く宮殿に戻って手当てをしなければ……。

「ありがとう。もう大丈夫だから」

俺から離れ、またひとりで戻ろうとする彼女の身体を掴んで肩に担ぎ上げる。

王子としての振る舞いなんて忘れた。

「ちょ……ちょっと、下ろして」


< 117 / 263 >

この作品をシェア

pagetop