銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
8、不穏な動き ー ジェイクside
「もう無茶はしないでくれ」

俺の腕の中で眠ってしまったセシルを自分のベッドに運び、その髪を優しく撫でた。

薬を飲ませたからよく眠っている。

飲ませなかったら、俺の制止を振り切ってでも自室に戻っていただろう。

彼女の腕の怪我は軽いものではなかった。

今出来る限りの手当てはしたが、俺のように傷跡が残ってしまうかもしれない。

「本当に……お前は馬鹿だ」

苦く呟く。

「何故俺を庇った?」

普通なら逃げるだろう?

それなのに彼女は危険を顧みず無茶をした。

何か危険を察知したらすぐに逃げるよう約束させようとしたが、素直に従うような女ではなくて……。

ここにずっと閉じ込めておけたらどんなに安心か。

だが、そんなこと出来るわけない。

彼女の自由を奪うようなものだ。

閉じ込められる辛さは俺がよくわかっている。
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