銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
昔……あいつはサーロンの取り巻きのひとりだった。

サーロンが投獄される前にこちらに寝返ったが、ただのフリだったのかもしれない。

「サーロンのところに行くぞ」

ふたりに声をかけ、部屋を出る。

長い廊下を早足で抜けて宮殿の奥に進むと、階段の前に兵がふたり立っていて、俺達三人を見て敬礼した。

ゴードンが兵からランプを受け取り、地下に続く階段を降りて行く。

俺とギリアンはゴードンの後に続いた。

階段は真っ暗で、ランプなしでは歩けない。

ポチャ、ポチャと水滴が落ちる音がする。

おまけに、空気が冷たくなってきた。

地下に降りると、牢が九つあって、サーロンはその一番奥。

ランプでそこだけうっすら明るくなっているからすぐにわかった。

牢の前にも兵がふたりいて交代制でサーロンを監視している。

牢の鉄格子には南京錠が三つあり、簡単には逃げられない。
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