銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
靴音に気づいて牢の奥に座っていたサーロンがゆっくりと顔を上げた。

サーロンは父の三つ下の弟。

父は温厚で穏やかな性格だが、叔父であるサーロンは気性が激しく粗暴。

ゴードンと同じくらいの体躯で、若い頃はケンジット一の剣の使い手だったと聞いている。

その手足には枷がはめられ、自由に身動きは出来ないはずなのに、なぜかその姿を見ると背筋がぞくりとした。

白髪交じりのボサボサの髪、長く伸びたヒゲ。

だが、その深緑の目は研磨された宝石のようにキラリと光る。

その目を見て確信した。

こいつはまだ王位を諦めてはいない。

いつか牢を抜け出す気だ。

「これは、珍しい客が来たものだ」

俺を見て高笑いするサーロン。

「久しぶりですね。元気そうで驚きましたよ」

そう声をかけると、叔父は不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「フン、元気で悪いか?」
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