銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
一緒にいれば、セシルのちょっとした表情でいろいろわかる。

その目や態度で俺を好きだと告げているのに……、俺の口付けにはあんなに夢中で答えるのに……、すぐに殻に閉じこもって俺を避けようとする。

まあ、怪我の治療と称して自室に彼女を閉じ込めている俺にも非はあるんだ。

このままだと愛人なような扱いだし、彼女を不安にさせてしまう。

だから、ギリアンとクレアの手を借りて指輪やドレスを用意し、セシルに結婚を申し込む準備を進めた。

彼女の左手の指輪を見る度、婚約したんだと実感する。

セシルも自分の指輪をたまに眺め、幸せそうに微笑む。
そんな彼女が……愛おしい。

今、セシルと月を眺めているのは、父に『彼女に望遠鏡を見せてあげなさい』と言われたからだ。

「ジェイは子供の頃からずっと月が好きなの?」
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