銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
セシルは疑いの眼差しを俺に向ける。

……俺の噂を聞いて焼き餅を焼いているのか。

「それはただの噂だ。父の執務を代行していて女にうつつを抜かす暇なんてない。民衆の暮らしぶりを知りたくて宮殿を頻繁に抜け出したら、そんな噂が立った」

俺の説明に驚いてセシルはポカンとする。

「え?そうなの?」

「そうなんだよ。父の方がよっぽど遊んでる。それで俺が生まれたわけだから」

自嘲するように言えば、彼女は首を傾げて問いかける。

「それは……どういう意味?」

「俺は正妃の子でも側室の子でもない。母は娼館で働いていて、そこで父と出会い、俺を身ごもった。だが、母は娼館では働けなくなり、孤児院に身を寄せた」

父に子供がいたなら、落とし胤の俺が王子として迎えられることはなかっただろう。

俺の生い立ちを聞いてセシルは静かに相槌を打つ。

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