銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「だから……孤児院にいたって言ったのね。噂なんか信じてごめんなさい。でも……一緒に寝てても何もしないのは?」

大事だから手を出さなかったのだが、逆にそれが彼女を不安にさせていたようだ。

「怪我が心配だったし、一度抱いてしまったら自分をもう抑えられないから」

セシルの瞳を捕らえ、その唇にキスを落とす。

すぐに終わらせるつもりだった。

だが、触れてしまえば、もっと彼女が欲しくなって……。

その細っそりとした身体を抱き締め、真っ赤に色づいた彼女の唇をむさぼった。

俺の首に腕を絡めて口付けに答えるセシル。

鼻先を掠めるのは、彼女のジャスミンのように甘く芳しい香り。

その香りが俺を狂わせる。

もっと、もっと彼女が欲しい。

抑えられないこの衝動。

「お前を抱きたい」

余裕のない声で言えば、セシルは俺の目を見て頷いた。
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