銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
それが合図。

彼女を抱き上げて部屋の中に戻り、ベッドに横たえる。

明かりはベッドの側にある小さなランプだけで、その周りだけがセピア色の光に包まれていた。

セシルの着ているドレスを脱がしていくと、巻いていた布が解けていて腕の傷が目に入る。

「そんなに……見ないで。醜い……でしょう?」

セシルは手で傷を隠そうとした。

「いつも見て知ってるし、俺にはこの傷が愛おしい」

それは、彼女が俺を守ってくれた証。

「醜いなんて思ったことは一度もない」

セシルの目を見てそう告げて、その傷にゆっくりと口付ける。

“早く治れ”と願いを込めて……。

すると、「あっ……」と艶っぽい彼女の声が聞こえ、顔を上げた。

「痛かったか?」

そう問いかければ、彼女は「ち、違う。痛いんじゃなくて……なんか……」と口ごもり俺から目を逸らす。
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