銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
ベッドを出ると、素早く服を身につけながら確認した。

「何かあったのか?」

ゴードンは悔しそうに唇を噛み締めながら告げた。

「サーロンが脱獄した」

予感は的中。

だが、それはある程度予期していたこと。

「で、ただ逃したわけじゃないだろう?」

ゴードンの目を見て聞けば、こいつはゆっくりと頷く。

「ああ。サーロンは海の塔に逃げた」

こいつの言葉に、ある情景が頭に浮かんだ。

断崖絶壁にそびえ立つ、古い石造りの塔。

苦い思いが胸に広がる。

「……海の塔か。五年経っても俺を苦しめるんだな」

そこは、俺と父がサーロンに監禁された場所だった。

「どうする?」

「向こうはただ逃げたんじゃない。この五年の間に俺を倒す準備をして来たはずだ」

地下牢で見たサーロンのあの目。

俺を倒す気満々だった。
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