銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
腰には長剣がさしてあって、男が一歩歩く度にガシャンと鞘と剣が擦れる音がする。

その音がなんとも不気味だ。

男は大柄で、その背はゴードンくらい。

底知れぬ恐怖を感じる。

男は私の目の前に来ると、そのゴツゴツした手で私の顎に触れてきた。

怖くて身体が震える。

なぜ私はここに連れて来られたのか?

男は私と目が合うと、ニヤリとした。

「俺が処刑したレノックス公の娘か。美しいな」

男の衝撃的な言葉に心臓がドクンと音を立て止まる。

父を処刑した……?

まさか……。

「サーロン二世……?」

思わず声を上げれば、男はその言い方が気に入らなかったのか片眉を上げた。

「小娘にそう呼ばれるとはな。次に呼ぶ時は”陛下”と呼べ」

やっぱりサーロンなのね。

この男のせいで……私の父は死んだ。母だって……。

返事をせずに、キッとサーロンを睨みつける。
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