銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
この男が憎かった。

「ほお。その目、ガーネットの宝石のように美しい。今すぐにでも自分のものにしてやりたくなるな。お前に今宵の伽を申付けよう」

鼻がくっつきそうな程顔を近づけられ、虫酸が走った。
「お断りよ!」

声を荒げて、サーロンの顔にペッと唾を吐きかける。

彼はほんの一瞬驚いたが、その頰についた唾を拭い、口の端を上げた。

「じゃじゃ馬らしいな。だが、手懐けるのは得意だ。後でたっぷり可愛がってやる」

サーロンは嫌らしい目で私を見た。目を逸らしたかったが、今自分がどこにいるのか知りたくて、彼の目をしっかりと見て言った。

「ここはどこなの?」

「海の塔。お前の王太子をずっと監禁していた場所だ。残念だが、王太子とは結婚出来ない。諦めろ」

ハハッと笑って、サーロンはさっき座っていた椅子に戻る。

< 207 / 263 >

この作品をシェア

pagetop