銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
息急き切って現れたギリアンに声をかければ、こいつは胸に手を当てながら口を開いた。

「セ……セシル様が誘拐されました!」

ギリアンの言葉に、一瞬目の前が真っ暗になる。

「本当なのか?」

側に来たゴードンが、驚いた様子でギリアンに確認する。

「……ああ。クレアの話だとフィッツジェラルド侯爵の娘、シャーロットに茶会に誘われ、そのまま行方知れずになったそうだ」

「またフィッツジェラルドか……」

憎らしげに呟いて、ギュッと唇を噛む。

前に襲った連中が逃げ込んだのがフィッツジェラルド侯爵の屋敷。

サーロンの脱獄に協力したのも恐らく奴なのだろう。

侯爵は海の塔の管理を任されている。

サーロンを脱獄させるために、俺達に寝返ったフリをして、準備を進めてきたに違いない。

「宮殿内を探したが……セシル様はいなかった」

ギリアンは残念そうに俯き加減で報告する。
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