銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「なあ、もし俺を誘き出すなら、お前はどういう手を使う?」

そう質問すれば、ギリアンは顔を上げ、躊躇いながらも俺の目を見て答えた。

「……ジェイの大事なものを……奪うだろうな。セシル様を……」

恐らくセシルが誘拐されたのは、サーロンの指示によるものだろう。

彼女もきっとあの塔にいるのだ。

大切なものが出来ると言うことは、俺の弱点が増えるということ……。

だが、セシルを愛したことを後悔はしていない。

「俺の命に代えても彼女を奪い返す」

じっと海の塔を見据えて呟けば、偵察に行っていた近衛兵が俺の前に跪いた。

「殿下。塔の正面には見張りが十名、裏には五名。それと、フィッツジェラルド侯爵とその娘が中に入って行くのを確認しました。従者が何か絨毯のようなものを抱えていましたが……」

「恐らく……その絨毯にくるんでセシルを運んだんだろうな」


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