銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
とりあえずそのことにホッとするも、彼女は手足に枷をつけられ、床に座り込んでいる。

サーロンはセシルの前まで来ると、手を伸ばして彼女の顎を掴んだ。

セシルの顔は強張り、震えている。

「……セシル」

俺は小さく彼女の名を呟いた。

すぐに彼女を助け出したい。

だが、周りは敵だらけ。

剣を持った兵が何人もいる。

悔しいが、今は無理だ。

セシルを連れ出そうとした時点でふたりとも捕まる。

サーロンが彼女に何かすればすぐに飛び出すつもりで、腰の剣に触れながら固唾を呑んで状況を見守った。

ジワリと額に滲む汗。

サーロンは、彼女を見て口角を上げた。

「俺が処刑したレノックス公の娘か。美しいな」

叔父の発言に動揺を隠せない彼女。

目の前にいる大男が自分の父親を殺した敵と知り、セシルはサーロンを見据えた。

キラリと光るその真紅の瞳。
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