銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「ほお。その目、ガーネットの宝石のように美しい。今宵の伽を申付けよう」

サーロンはセシルを気に入ったのか、彼女に命じた。

「お断りよ!」

負けん気の強い彼女は、サーロンの顔に唾を吐きかける。

あいつがセシルを懲らしめると思って一瞬冷やっとしたが、彼女を好ましく思ったのか暴力は振るわなかった。

それを見て、ホッと胸を撫で下ろす。

それからすぐに、魅惑的な衣装に身を包んだ踊り子達が登場した。

周囲の目がそちらにいくと、俺はそっとセシルに近づく。

「セシル」

踊り子に気を取られている彼女の耳元で囁いた。

振り返って俺と目が合った彼女は、かなり驚いて俺の名を叫ぼうとした。

慌ててセシルの口に手を当て、「シッ!静かに」と小声で注意する。

ここでサーロンに見つかってしまっては元も子もない。
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