銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
彼女が俺の目を見て何度も頷くのを見て、ゆっくりと手を離す。

だが、彼女はまだ俺がここにいるのが信じられないといった顔をした。

ここに来た理由を尋ねるセシルに、その理由を告げる。

「脱獄したサーロンの様子を探りに来たんだが、ギリアンからお前が宮殿からいなくなったと聞いて、探していた。どこも怪我はないか?」

「ええ、大丈夫」

彼女の答えを聞いて安心した。

どうしてもセシルに触れたくなって、そっと口付ける。

ほんの一瞬なら周りにバレない自信はあった。

もっと彼女に触れたかったが、そうもいかない。

「今は敵の数が多くて連れ出せないが」

セシルにそう言ったところで、自分の衝動と戦った。

今すぐに彼女の手を引いてここから逃げ出せないのがもどかしい。

だが、焦ってはいけない。

「今宵、お前をサーロンから必ず奪い返す」
< 224 / 263 >

この作品をシェア

pagetop