銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
それは、彼女への絶対の約束。

そして、サーロンへの宣言。

奴には聞こえないが知ったことじゃあない。

セシルは、俺の女だ。

サーロンになど渡さない。

熱い眼差しで彼女の唇に触れる。

「続きはお前を救い出したら」

そう告げて、後ろ髪を引かれる思いでこの場から姿を消した。

だが、感傷に浸っている暇なんてない。

俺には任務がある。

塔の内部を偵察して、兵の数や部屋の様子を確認して頭に叩き込んでいく。

敵に見つかった時の逃走経路は確保しておきたい。

広間を出て右手の突き当たりにある長い螺旋階段を駆け上がる。

そこには、牢がふたつあった。

奥のが、昔俺が閉じ込められていた牢。

ゆっくり奥に向かえば、そこは変わらぬままだった。

変わったことといえば、牢の前の監視がいないくらい。
ここにいた日々を思い出さずにはいられない。
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