銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
牢には南京錠がついていたが、驚いたことに鍵はかかっていなかった。

中に入り、辺りを見回す。

壁には俺が血で書いた文字がまだ残っている。

【必ず生きてここを出る】

書くことで、希望では終わらせず、実現しようとした。

そして、それは俺がここから脱出して……現実となった。

鉄格子の窓から月がうっすら見える。

今宵は満月。

俺が脱獄した時も……セシルと出会った夜も、満月だった。

満月の時の俺は、運がいい。

だから、今宵も……。

「無事にセシルをこの腕に抱き締めさせてくれ」

月を見上げ、俺は心から願った。
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