銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
それに、ただの風邪だったら、みんなをがっかりさせてしまう。

「大丈夫ですよ。皆には内密にしますし、宮廷医もすぐに来てくれます。私とエミリーは診察の間、別室におりますから」

クレアは私の気持ちを読んだのか、安心させるように笑うと、医師を呼びに行った。

すぐに部屋に来てくれた初老の男性医師は、私を診て笑顔で告げる。

「ご懐妊ですよ。おめでとうございます」

その言葉が胸にジーンときて、思わず微笑んだ。

「ありがとうございます!」

宮廷医が部屋を出て行くと、自分のまだ平らなお腹に手を当てた。

ジェイの赤ちゃんがここにいる。

そう思うと、嬉しさが込み上げてきて、気だるさを忘れた。

自分の結婚式にそのことを知るなんて、なんて幸せなのかしら。

代々、王家では子供の数は少なく、ジェイにも兄弟はいないし、今の国王だって兄弟はあのサーロンだけだった。
< 255 / 263 >

この作品をシェア

pagetop