銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
トンと軽くジェイの胸を突いて文句を言えば、彼は「半分は本気だ」と悪戯っぽく笑った。

「自制して下さい」

ピシャリと言う私を見つめ、彼は突然キスをする。

「これでしばらく我慢する」

呆気に取られる私を楽しげに見て、彼はニヤリ。

もう!周りに人がいるのにどうして人前でキスなんかするの!

恨みがましい目で彼を見るが、彼は悔しいくらい平然としている。

「もう皆様お待ちです。ジェイ様、セシル様」

ギリアンが懐中時計を見て私達を急かす。

ジェイは私の手を握って、部屋を出ようとする。

その時、クレアが私に近づき声を潜めた。

「ジェイ様には、セシル様からお伝え下さい」

……やっぱり赤ちゃんのこと知ってたの?

驚きで目を見開く私を見て、クレアは優しく微笑む。

いつもなら一番はしゃぎそうなのに、私を気遣って口にしなかったんだ。
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