銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
今は式に集中しよう。

式は宮殿の敷地内にあるチャペルで、厳粛な雰囲気の中行われた。

本当は寺院で行われるのが通例なのだが、オークションの事件があってジェイとギリアンが私に配慮してくれたのだ。

緊張はしたが、ジェイに上手くリードされ、誓いの儀式も無事に終わった。

ホッとして彼と一緒に退場したら、突然身体がふらついて……。

そのまま床に倒れ込むと思ったが、ジェイがすかさず私を抱き上げた。

「危なっかしいな」

クスッと笑みを浮かべるジェイ。

でも、何か私の異変に気付いているようで、じっと私を見る。

彼のフォローを招待客は演出と思ったのか、「おお〜!」と拍手が沸き起こった。

周りは誤魔化せたけど、彼は誤魔化せない。

「辛くなったら、遠慮せずに言うんだぞ」

彼は小声で私に念押ししてくる。

早く言わなきゃ。
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