銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
その後ろにはクレアがいる。

「大変だ」

コンラッド男爵の手には何やら書状が握られていた。

「旦那様、どうされました?」

慌てた様子の彼に声をかける。

「こ、国王陛下の勅命で……エミリーが……宮殿に行くことになった」

興奮気味のコンラッド男爵は、息切れしながら報告する。

『国王陛下の勅命』?

その言葉に小首を傾げながら、さらに突っ込んで聞く。

「何かパーティでもあるのですか?」

「……王太子殿下の花嫁候補として呼ばれたんだ。この書状だと一ヶ月後には王室から迎えの馬車がくるらしい。年頃の令嬢は皆呼ばれるそうだ。エミリー、行ってくれるか?」

「……王太子殿下の花嫁候補」

ポツリと呟いて考える。

王太子殿下は確か二十五歳。妃のひとりやふたりいてもおかしくない年齢だ。
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