銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
若い男性の声が耳元でして、私は抵抗せずにコクンと頷いた。

ひょっとして泥棒?

うちに盗みにでも入ったのだろうか?

ウウーと鋭い牙を見せ、私の背後の相手を睨みつけ唸るウィング。

すると、屋敷の目の前の街路が急に騒がしくなった。

「どっちへ行った?」

「あっちか?」

武装した兵士達が数人ランプを手に持ち何かを探している。

この状況だと、恐らく私の背後にいる男を探しているのだろう。

「頼む。その犬を何とかしてくれ」

男は私を屋内に引きずり込んで向き合うと、切羽詰まった様子で声を潜めた。

暗がりで男の顔はよく見えないが、右手にナイフを持っていて、それがキラリと光る。

殺される?と思って咄嗟に身構えたが、男は意外なことにナイフを懐に収めた。

あれ?

私を刺すんじゃないの?
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