銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
安堵すると同時に彼の行動に驚いた。

どうやらこの人には私とウィングに危害を加えるつもりはないらしい。

警戒を解いて、自分の唇に人差し指を当て、ウィングに命じた。

「ウィング、大丈夫だから、静かに」

じっと私を見て座り込むウィング。

男は少しホッとして「ありがとう」と私に礼を言う。

泥棒にしてはその声が優しくて、マジマジと彼の顔を見た。

月の光が部屋の中に差し込み、男の顔がうっすらと見える。

年は二十くらい。美しい面差しをしていて、後ろで無造作に束ねられた髪は、月の光に照らされ煌めいている。

その瞳もキラリと深海の青のような光を放っていて……。

どこかミステリアスで綺麗な人だった。

「あなたは泥棒なの?」

じっと彼の顔を見ながらそう問えば、「いいや」と微かに笑いながら答える。

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