銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
……冷たい。

このまま目を開けないんじゃないかと不安になる。

「……無茶し過ぎだ」

下手をすれば殺されていたかもしれない。

自分を犠牲にして他の者を助けるなんて、男にだってそう出来ることではないと思う。

……そんな女性、今までいなかったな。

何とも言えない感情が湧き上がってきて、彼女の頰を優しく撫でる。

すると、急に彼女が動いて俺の手を掴み、身を寄せてきた。

「え?」

呆気にとられる俺。

身体が冷たくて温もりを求めているのだろうか?

ブランケットを肩までかけてやるが、彼女はさらに動いて俺の腕を引き、それを枕にする。

それは一瞬の出来事で、この俺が少しも動けなかった。
「……嘘だろ?」

目を丸くし呟く俺。

そっと腕を抜こうとしたが……。

「抜けない」
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