銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「それは残念ですね。まあいいではありませんか。私はこれで失礼します。誰かさんが宮殿を抜け出したから、仕事が溜まっているんですよ」

俺に嫌味を言い、踵を返してしてスタスタとドアに向かうギリアン。

ドアノブに手をかけるとこちらを振り返り、意味深な笑みを浮かべた。

「ごゆっくり」

退出するギリアンに枕を投げつけたくなったが、グッと堪え、代わりにハーッと深い溜め息をつく。

気を失った女に手を出すほど愚かではないが、この状況、彼女が起きたら絶対に誤解しそうだ。

結婚なんて……興味ないんだが。

「……厄介なことになったな」

溜め息交じりの声で呟いて、コンラッド男爵の令嬢に視線を戻す。

やはり……どこかで会った気がする。

だがコンラッド男爵の令嬢と対面した記憶はない。

こんな綺麗な顔、忘れるはずはないんだが……。
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