銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
そんなことを考えていたら、彼女が寝返りを打って、パカッと小さな音がした。

ん?と彼女を凝視すれば、黒い髪の毛の塊がずれて、中の金糸のような髪が見え隠れする。

ズレた髪の塊を掴むと、簡単に彼女の頭から外れた。
「これは……カツラだな」

苦笑しながらカツラを眺めたが、次に彼女を見てハッとした。

これは……忘れもしないあの時と同じ光景。

俺を救ってくれた天使が俺の腕の中にいる。

いや……これはもう女神と言うべきか。

あれから五年経った。

セシルも多分このくらいの年齢になっているはず。

綺麗な少女が美しい女性になって再び俺の前に現れた?
「お前は……セシルなのか?」

目を閉じたままの彼女に囁くような声で問いかける。

返事がないのはわかっていたが、声に出さずにはいられなかった。

「起きてその瞳を見ればはっきりするか」
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