銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
野盗に襲われた時に何度か胸を触られたことはある。

でも、こんな親密なムードではなかったし、生か死かの重要局面でいつも必死に抵抗して逃げ切った。

今の状況は過去にない経験だ。

それに、彼も私の知らない……彼だ。

五年前と状況は似ているようで違っている。

あの時の彼は、女の子が誰でも夢見るような優しい王子のような印象だった。

だけど、目の前にいる彼は……何というか大人な色香が漂う男性。

こんなにじっと見つめられるのが恥ずかしいのに、彼の瞳に捕縛されたまま逃げられない私。

それは……彼の魅力故なのか。

彼には自分の嘘がバレてしまっているような気がしてならない。

こうして質問責めに合っているのだから、きっと誤魔化しきれていないのだ。

彼の前だと冷静でいられない。

いつもの自分でいられない。

ああ〜、もうどうしたらいいの?

「……そ、それは……」
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