銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
言い訳を考えようとしても、何も浮かんで来ない。

「『それは』の続きは?」

クスリと笑みを浮かべ、ジェイは私に顔を近づけてきた。

彫刻のように美しい彼の顔が急接近してますます気が動転する。

「それは……の続き?」

元の質問が何だったかも忘れ、ジェイの言葉をただ繰り返せば、彼は楽しげに「時間切れだ」と笑って、私の唇を奪った。

柔らかいものが自分の唇に触れたかと思ったら、下唇を甘噛みされる。

何か起こったかわからず、ただ呆然とジェイを見る私を見て、彼は意地悪く笑った。

「隙だらけだな。ゴードンからお前の武勇伝を聞かされたが……同一人物とは信じ難い」

その台詞でハッと我に返る。

あっ……。

ひょっとして私……からかわれた?

ちゃんと私が抵抗するか反応を試したんだ。

そう思うと、緊張も忘れ、フツフツと怒りがこみ上げてきた。
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