銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
彼が楽しげに私の唇を親指の腹でなぞってくる。

「触らないで!」

ジェイの手を振り払い、バンと渾身の力でジェイの胸をど突けば、彼はゆっくりと私から離れた。

これで逃げられる。

そう思って上体を起こすが、事態は悪化した。

スッと私の身体を覆っていた彼の外套が下に落ち、下着姿を彼の目に晒すことに……。

「あっ」

間抜けな声を出して慌てて胸元を腕で隠せば、ジェイはククッと肩を震わせ笑った。

「ホント、隙だらけだな」

距離をまた詰めて私に迫る彼。

後ろに仰け反ると、ドンと壁にぶつかり逃げ場を失った。

「わかってるのか?そう無防備だと簡単に男に襲われるぞ?」

彼の挑発にカッと頭に血が上って言い返し、身構える。

「そんな男、蹴りを入れて倒すわ!」

「わかってないな。力で襲うんじゃない。相手を誘惑して奪うんだ。こんな風に」
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