銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
ボソッと呟くような声で感謝の言葉を言えば、ジェイが「ああ、そう言えば……」と振り返り、またベッドに戻った。

ん?

首を傾げて彼に目を向ける。

すると、屈んでベッドの下にある何かを拾い上げ、私の頭に被せた。

「これ、忘れるなよ」

ジェイはキョトンとする私を見てフッと口の端を上げ、後ろ手を振って部屋を後にする。

……やっと落ち着ける。

ジェイの退出で少しホッとするも、彼が私の頭に被せた物体がずれ、長い黒髪が一房目の前にサラリと落ちた。

それを見て、ギョッとなる私。

彼が私に被せたのは、黒髪のカツラ。

嘘でしょう?

私……ずっとジェイと地毛で接していたの〜!

顔から血の気が引いていく。

どうしよう〜!

男爵令嬢の替え玉をやっているのがバレバレだ。

クレアとの感動の対面の雰囲気が一転し、私は彼女と目を合わせ、顔を青くした。
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