銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
彼女と目を合わせてそんな話をすれば、陛下がニコニコしながら言う。

「そう言えば、王太子が望遠鏡を持っていたな。あれも月や星が好きでな。今度見せてもらうといい」

「ええ、是非」とシャーロットは嬉しそうに返事をしたが、私は横でただ微笑んだ。

これ以上、出しゃばることはしたくない。

王太子のお妃の座を狙う令嬢達の視線が私にチクチクと刺さるのだ。

その後は、あまり目立たぬよう聞き手に徹し、会が終わると、すぐに退出した。

「昼食会はどうでした?」

私を部屋で出迎えたクレアが興味津々で聞いてくるが、私は大きな溜め息をついた。

私が主賓席に座らされたのは、私が馬車襲撃の被害者で、一緒に捕まっていた令嬢を逃したからだ。

私に向けられる好奇な視線と妬み。

居心地は良くなかった。

出来るなら、今すぐにでも宮殿を出て男爵の元に帰りたい。
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