私たちは大人になった
「ちょっと、どういうつもり?」
二次会がお開きになり、新郎新婦のお見送りのあと。
当然のように、周りから二人で一緒に帰るように仕向けられたため、安川君と並んで駅まで歩く。道すがら、安川君に問い詰める。
「どうって、別にデートくらいしてもいいだろ?お互いフリーなんだし」
安川君は軽いノリで答える。心の底からそう思っているのだろう。
軽い。とにかく軽すぎる。
もういい年した大人になったというのに、この男は深く考えるということをしないのだろうか。
当然、私と本気でどうこうなる気はないだろう。
「そういえば、この頃デートの一つもしてないなと思って」
「じゃあ、女の子と出会うために合コンでも行ったら?」
「それは、正直面倒くさい。もうこの年になると、一から恋愛を始めるのがしんどいっていうか。だけど、たまには誰かとデートしたい」
やる気があるんだか無いんだか分からない発言に、思わず顔を顰める。
「なんで、私がそれに付き合わなきゃいけないのよ」
「嫌ならいいけどさ。どうせ、恋人も居なけりゃ休みの日は半分以上ダラダラしてるだけだろ?」
「……っ!!そんなことないわよ!」
「図星なくせに」
失礼な発言を繰り返しながら、安川君は予想が当たって嬉しいのか、ふふんと上機嫌に笑う。
「いいじゃん、あんまり深く考えずにさ。美味いもんでもおごってやるよ」
「ダイエット中だからいい」
「じゃあ、どこか行きたいところは?」
安川君の提案に乗るものかと思いつつ、一つ行きたいところが思い浮かぶ。
「……アウトレット」
「何?」
「この前増床して話題になってるアウトレットに行きたい。セールやってるし。安川君、車持ってるでしょ?そこなら行ってやらなくもない」
「上から目線なのが気になるけど、交渉成立だな」
餌にまんまと釣られた感は否めないが、お互いの利害が一致した。
相手は安川君だから、特別に気を使うこともないし、彼はたまには気分転換したいだけ、私は久々に思いっきり買い物がしたいだけだ。
連絡先が変わってないかを確認して、二人の予定の合う日に会うことを決める。家まで迎えに来てくれるというので、マンションの住所も教えた。
「あ、パンツは禁止。絶対、スカートな」
もう聞いておくことはないかと確認したら、どん引きな答えが返ってきたので、スルーする。
「デートにはスカートだろ」
呆れてスタスタ早足で歩き出した私を追いかけて、安川君が念押しする。
「それだけは絶対に譲れない」
「男ってそのあたりの思考は中学生から成長しないのかしら」
アラサーだというのに、思春期真っ只中な要求を述べる彼に、大きく溜息をついた。