オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
するといつの間にか浩太郎さんが私の横に立っていた。

「よかったな。っていうかお前のいい顔を引き出せるのは俺しかいない。最高の彼氏だもんな」

ちょっと悔しい気もするけど……

「そうですね。私をこんな顔にさせるのは一人しかいませんから」

浩太郎さんにしか聞こえない小さな声で囁くと、浩太郎さんの頰が赤くなった。

この人を思い浮かべたからいい写真が撮れたんだけど……ね。



私の撮影が終わるとタイミングよくスマホが鳴った。

電話は緒方チーフだった。

隣のスタジオで自社商品のスチール撮りをしてるから終わったら来てほしいとのことだった。

私はリーチェの担当者と少しだけ打ち合わせをしてから行くと伝えた。

実は浩太郎さんも新商品のポスター撮影に立ち会うという名目でここに来ていたので私の撮影が終わるとすぐに隣のスタジオに移動した。

私の撮影はおまけというわけだ。

「そういえば隣でエカリーノさんも撮影してるんですよね。私さっき見ましたよ。結城梓(ゆうきあずさ)」

結城梓は映画やドラマで活躍する人気女優だ。

緩やかなロングヘアにシャープな顔立ち。目はくっきり二重でぽってりとした唇はキスしたくなる芸能人ナンバーワンと言われている。

もともと雑誌の専属モデルとして活躍していたが女優に転身。そのプロポーションは女性の憧れでもある。

エカリーノの美白化粧品のイメージキャラとして３年前からCMに出ている。

今日は新しく発売される美容液の撮影をしているのだ。
< 106 / 161 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop