オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
「もしもし……」

『俺だけど』

「どうしたの?」

『さっきは助けてくれてありがとう』

あんな嫌味を言ってもありがとうというなんて……。

「別に助けたつもりはない。ただ香奈に余計な過去を知られたくないだけ。話はそれだけけ?だったらもうき––」

『待って。さっき君が両親に話をするって言ってただろう?それって……』

よっぽど話をしてもらいたくないの?

「別に本当のことを話すつもりなんてないわよ。ただうちの父も母も智也のことをよく知ってるでしょ?何も知らない香奈がいきなりうちの親に智也を紹介したら許すと思う?どの面下げてって話でしょ?だからそうならないために私が事前に話をつけるってこと」

普通に話していたつもりだったけど結構きつい言い方になっていた。

流石に返す言葉もなかったのかしばらく沈黙が流れた。

『わかった。遙には迷惑ばかりかけて申し訳ない。その日は必ず香奈を外に連れ出すよ。で、何時頃に話をする予定?』

「おそらく午後だと思うけど……」

そう返事をすると無言になった。

何も言わないので電話を切ろうとすると「わかった」と言った。

「それと……今後はこういう電話はもうやめてほしいの。それと香奈には私とのこと絶対に話さないでね」

『ああ、これを最後にする……じゃあおやすみ』

電話が切れた。
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