オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
「ど、どんな人だ」

父の焦った様子を見たらうちの会社の副社長だなんてとても言えない。

「同じ会社の人で5歳年上の方」

「そ、そうか」

落ち着きのなくなった父を見て母は父の肩をポンと叩いた。

「もう、お父さんたらそんなしどろもどろになって……遙にいい人が見つかったのよ。良かったじゃない。智也くんと別れたって聞いたときはどうなることかと思ったけど……」

すると父は大きく頷いた。

「まあ、そうだな」

父も母も別れた理由を聞くことはなかったけど、本当の理由を知ったらと思うと不安しかない。

こんな形で浩太郎さんを両親に紹介するのもなんか申し訳ない気持ちになる。

「と、とにかく明日午後にうちに来てくれるから二人共家にいてね」

両親は頷いたが、父の様子は落ち着きがなかった。


仕事の忙しい浩太郎さんと連絡が取れたのはその日の夜だった。

「本当にごめんなさい」

『いいよ。君のご両親に挨拶できるいい機会だし、その方が俺としては好都合だ」

「好都合?」

『心おきなくいろんなことができる』

「え?」
< 122 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop