オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
「吉岡さん顔を上げてリラックスしてください」

母にそう言われた浩太郎さんだが姿勢を崩さなかった。

「あのねお父さん、お母さん、今日は報告しなくちゃいけないことがあるの」

父と母は顔を見合わせると視線を浩太郎さんに向けた。

きっと私たちが結婚するとかそういうのを期待してるのかもしれない。

「なあに？」

期待のこもった母の声に私は大きく深呼吸をした。

「香奈のことなの」

一瞬間が空いた。

父も母もなぜここで香奈の名前が出るのか？といった感じだ。

「香奈に結婚を考えている人が現れたのよ」

すると父も母も緊張の糸が切れたみたい、大きなため息を吐いた。

「なんなの？遙の彼氏を紹介したかと思えば香奈が結婚したいって……ってまさか吉岡さんが香奈のお相手とか？」

「違います」

浩太郎さんが即座に否定した。

「違うの。浩太郎さんは私が今お付き合いしている方。問題は香奈の彼氏なのよ」

全く話が見えない両親は困惑している。

「あのね……香奈の彼氏っていうのが……智也なのよ」

『え？』

父と母の声がぴったりと重なった。

「ど、どういうことだ？」
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