オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
父が食いついてきた。

「実は私と智也が別れることになったきっかけが––」

香奈を好きになったからと言おうとしたが、ここで浩太郎さんが私の言葉を制するように私の手をぎゅっと握った。

「すみません。ここからは私に説明させてください。私と遙さんは同じ会社に勤めております。部署は違うのですが、偶然にも彼女と一緒に仕事をする機会がありまして、僕が彼女に一目惚れしたんです。ですがその時彼女には長年付き合っている方がいると知らされて……ですが私は自分の気持ちを胸に留めておくことができず、結果的には彼女を奪う形になったんです」

実は……昨夜浩太郎さんとの電話で決めたことなのだ。

でもこれじゃあ智也から私を奪った浩太郎さんが悪者のように思われるようで嫌だった。

だけど浩太郎さんはこれが一番いい方法だから自分に合わせてくれと言われていた。

「本当なのか遙」

父の問いかけに私は小さく頷いた。
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