オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
「はっきり言うが、君を信用することはできない」

母もおなじ意見なのだろ。黙って二人を見ていた。

「ただ、香奈を騙すようなことをしなかったことは認める。でもそれと結婚は別だ。お互いの気持ちが本物だということを時間をかけて私たちに示してくれ。それまでは結婚は認めない」

香奈はきっとこうなることを予想していたのだろう。

反論せず黙って聞いていた。

少し前の香奈ならきっとそのまま家を飛び出していたのに……少なからず香奈を大人にしたのは智也なのかもしれない。

「わかりました」

智也は畳に頭をつけた。

「わかったならもう席を外してちょうだい」

言い方はきついが母の香奈を見る目は優しかった。

きっと母にも香奈の成長が目に見えたのだろう。

香奈は視線を私たちに向けると「お邪魔しました」と言って立ち上がると部屋を出て行った。
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