オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
嵐が去ったというべきか……今度は別の意味で緊張してきた。

「遙」

名前を呼んだのは母だった。

「はい」

「香奈のためとはいえ、吉岡さんを巻き込むなんてどういうことなの?」

「ごめんなさい」

言い返す言葉もございません。

ちらりと父を見るとまだ機嫌が悪そうだ。

「まさか吉岡さんとのことも香奈のためについた嘘だっていうんじゃないでしょうね」

「それは絶対ない」

私は全力で否定した。

すると今まで黙っていた浩太郎さんが口を開いた。

「すみません。彼女は別れた本当の理由を言おうとしていたんです。でも僕が余計なことを言ってしまいました」

父は浩太郎さんをまるで見定めるような目で見る。

なんかこんなにことが大きくなるとは思ってもいなかった私は緊張でどうにかなりそうだった。

「じゃあ、聞くが君は遙のことをどのように考えている?」

だからなんでこんなこと聞くのよ。

そもそも今日は香奈の応援に来てくれたようなものでそれ以外はおまけみたいなものなのに。

「浩太郎さん、何も答えなくてもいいよ。あのねお父さん今日は––」

そんなつもりで呼んだんじゃない。といおうとしたが浩太郎さんに遮られる。

「もちろん、遙さんとは結婚を前提としたおつきあいをしております」

「え?」
< 132 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop