オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
驚いたのはなぜか私だけだった。

「なんで遙がそんなに驚くのよ」

逆に母は私の反応に驚いていた。

「だって……彼、うちに会社の副社長よ」

それを聞いて父と母が腰を抜かしそうになったのはいうまでもない。

「え？ふ、副社長さん？」

母は慌てふためき、父は目が点になっている。

「申し遅れましたが、彼女の勤めております『エカリーノ』の副社長をしております」

申し遅れすぎだよね。

でもこれを最初に言ったら香奈の話どころじゃないことは予想していたのでそことは伏せておいてとお願いしていたのだ。

我に返った父は姿勢を正した。

「娘の会社の副社長さんとは大変失礼しました……でも本当にうちの娘とお付き合いを？」

「はい」

「でも副社長なんて立派な人とうちじゃ格差がありすぎるんじゃ」

父と母は複雑な表情を浮かべた。

「その点は全く問題ありません。社長は伯父にあたるんですが僕の両親は公務員です。だから結婚に家柄は関係ありません」

「……そうなの？」

浩太郎さんに尋ねると「ああ」と頷いたが、その会話を聞いていたは母が呆れた顔で「あんた何も知らないの？」と私に尋ねた。

「大まかプロフィールしか知らなかった」

すると父も母と顔を見合わせ呆れ混じりのため息を吐いた。

「だ、だって……今まで結婚のけの字も出てなかったんだもん」

結婚という言葉は確かにあったが冗談だと思っていいた。

それに付き合い始めて片手で足りる程度で、これからもっともっと彼のことを知りたいと思い始めたところなのだから仕方がないじゃない。


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