オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
聞き覚えのある声に私は飛び起きた。

目の前には会いたくて仕方がなかったあの人が立っていた。浩太郎さんだった。

でもなんで?なんでここにいるの?

浩太郎さんはアメリカにいるはずじゃなかったの?

いやいや、落ち着け私。

これは夢よ。

夢に違いない。

だって夢じゃなかったらこんな……。

「おばけでも見るような顔で見るなよ。愛する男が帰ってきたんだからここは駆け寄って抱きつくんじゃないの?」

「本当に……本当に帰ってきたの?」

「ただいま」

少しだけ痩せた感じがするが目の前にいるのは間違いなく浩太郎さんだった。

「いつ帰ってきたの?」

「いつって1時間ほど前に日本に着いた」

「なんで電話もメールもなかったの?会いに行きたかったのに来るなっていうし」

本当は嬉しくて仕方がないのに素直に会いたかったと言えない。

口をついて出てくる言葉は文句ばかり。

「悪かったよ。だけど完全に壊れちゃってね」

ポケットから取り出したのは画面がバリバリに割れたスマートフォンだった。

きっとあの事件の時にこうなったのだろうと思うと、目頭が一気に熱くなる。

「心配したのよ。テレビの画面に……あなたの名前が出てきたとき……どうにかなりそうだった。もし死んだら……私は……私は」
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