オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
そして迎えた19時。

我が社は毎週金曜日をノー残業デーにしている。

そのためこの時間に会社にいる人間はほとんどおらず。待ち合わせの1階エントランスも閑散としている。

本当に来るのだろうか。誰かに見られたらどうしようかとか嬉しくてドキドキとはほど遠く不安しかない。
そんな中、自動ドアが開き、男性が入ってきた。

「おい。行くぞ」

カジュアルなジャケットにジーンズ姿。緩めのパーマがかかった流れのあるヘアースタイルで上から下までパーフェクトなイケメンだが私を呼ぶ声でその人が副社長だと気付く。

「あ、あの……副社長ですか?」

あまりの変化に驚き確認すると副社長は怪訝そうに私を見る。

「当たり前だろう」

「で、でもスーツじゃないのはいいとして、さっきまでのびしっとしたいかにも仕事が出来ますって髪型とはあまりにも違うから…」

外人の様に身振り手振りで説明すると副社長は口に手を当てる。

「デートまで堅苦しい格好じゃお前が緊張すると思ったし……俺の毛はくせ毛なんだよ」

照れた様に視線を反らす副社長をみて不覚にも可愛いかもと思ってしまった。

それに私の為にわざわざ着替えてくれた気遣いにもドキドキしてしまう。

でもそれだけで私が副社長に心を許すわけではない。いくら私に合わせて着替えてくれたと言っても相手は我社の副社長。

今日のインタビューもこのデート?……もどうせ副社長様のお戯れの一つ。

そう、お戯れなの。

「おい、宮園なにボーっとしてる。行くぞ!」

副社長は先に歩き始めた。

「あの!行くってどこへ?」

すると副社長の足がぴたりと止まり振り返るとニヤリと笑った。

「いいところ」


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