オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
()からさ~。ふざけんじゃないっーの。わらし(わたし)の10年はなんらった(だった)()?」

泣く事よりも飲む方を選んだ私は号泣の代わりに泥酔していた。

「10年一昔って言うからね。本当に同情するよ」

里香子には申し訳ないが泥酔化した私は荒れていた。

「同情するなら智也をつれてこーい!ビンタの一発二発お見舞いしてやるん――」


――パシッ


後ろから鈍い音が聞こえて私と里香子が音の聞こえた方を見る。

「アンタ……最低」

女性が一緒にいる男性の頬を平手打ちしたのだろう。男性は片手を頬に当てていた。

女性の方は目に涙をためて今にも泣きそうに唇を噛みしめながらも男性の反応を待っている様だ。

だが何も言わない男性に業を煮やし、勢いよく立ち上がると男性を思いっきり睨んで乱暴にバッグを掴むと店を出て行ってしまった。

すると殴られた方の男性は大きな溜息を吐きながらなぜか私たちの方を向くとまたも面倒くさそうにお酒を一気に飲み干した。

普段なら決して見ず知らずの人に声をかけたりしないのだが今日の私は酒のチカラも相まって怖い物知らずだった。

私はすっと席を立ち上がるとその男性の前に立った。

後ろから里香子が私に向かって何か言ってるが私には聞こえていなかった。

「ちょっとあなたね~女を泣かすなんて最低よ」

「遥?」

里香子が慌てて私を止めようと駆け寄るが私の一度開いた口は止まらない。
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