オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい

「じゃあ、私が元カノだってことはまだ話してないよね」

智也は大きく頷く。

別に智也を困らせようと思っているわけではない。

ただ、香奈が智也と私の事を知ったらどう思うだろうかって事だ。

いつまでも隠し通すことなどできない。いつか知るときが必ずくる。

だがこれも時期がある。早すぎても遅すぎてもよくないのだ。

だけど一番の問題は香奈が真実を知った時それを受け止めれるかどうかだ。

「私の事は何も気にしないで欲しい。ただ、智也が好きになった相手は私の妹で、両親とも顔見知りだということ。そういったリスクを背負う覚悟がなければ香奈の事は諦めて」

「わかってる。俺だって覚悟の上で君と別れ、彼女と付合う事にした。ただもう少し時間が欲しい。俺の口から彼女にちゃんと真実を話す。だから少し時間が欲しい」

必死に頼む姿を見せつけられ切なくなる。

１０年も付合ってきたけど智也のこんな真剣な顔を見たことはなかった。