オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
「さて……メールに電話。全て無視したその理由を聞かせてもらおうか」

あっ！すっかり忘れていた。

「実は––」

私は人気雑誌の取材が入ったこと、そして自分の顔が雑誌に出ることになったことを話した。

「よかったじゃないか」

浩太郎さんは満足そうに微笑む。だが私は全く満足していない。

「会社の代表として出るようなもんじゃないですか。私は緒方チーフみたいに美人じゃないから
自信がないんです」

私は浩太郎さんがエカリーノの副社長だということを完全に忘れていた。

すると浩太郎さんの表情が少しだけ曇った。

「お前何か履き違えてないか？」

「え？」

「別にお前にモデルをやれと言っているんじゃない。エカリーノの広報として自社の商品の宣伝をするのが本来の目的だろ？自分のお仕事に誇りを持っているのならそんなくだらないことでヒーヒー言ってんじゃねえよ」

正論をぶつけられ私は何も言えなくなった。

確かにこの仕事は広報としての依頼だ。

社員が実際に愛用している自社の製品を売り込む物でもある。

「すみません、副社長のおっしゃる通りです」

恥ずかしくて浩太郎さんの顔が見られなくなる。

すると浩太郎さんが私の両ほほに手を当てむにゅっとした。

「後な、自分に自信がない言っているが俺はお前に一目惚れしたんだ。俺を惚れさせるほどの魅力があるってことを忘れるな！」

なんかさらっとすごいこと言われたかも。

顔を挟まれてる時点で色気は全くないんだけど、でも今すごくドキドキしてる。

それに連動するようにカーッと顔が熱くなるのを感じた。
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