魂が叫んでいるのに
中学2年のある日、やはり健一君の夢をみた。
そしてその何週間後かの日曜日、
大会でT中がA中に来た。
その日は 女子も試合があり、彼に試合を見られることになった。
私はレギュラーだったのでコートサイドに彼がいるのを感じながら試合をしていた。 試合は勝利した。
試合後、チームメイトから
「健一君、めっちゃ見てたよ。うちの中学応援してくれてたし!」
天に舞い上がる気持ちになった。

(私の事知ってくれた! 応援してくれた。)

勝手な思い込みだが、絶対気づいてくれた。そう思っていた。


中学3年。 あと半年もすると引退。

そんな中の大会・・
A中女子は区の大会準決勝まで進む。
大きな区の体育館。
彼に出会った場所にまた来ることができた。
もちろん、彼もいた。
この大会で 他校の女子バスケ部に声をかけられた。
「あなた、A中の子でしょ? この間テレビに出てたでしょ?」

そうそう、この何か月か前のこと、NHKの『中学生日記』という番組に
ほんの数分だけ出演していた。この時の私はとても奇抜な髪形を
していたため、目立つ存在だったのだろう。
彼も見ていてくれただろうか?

私たちは準決勝で敗退し、彼のT中は区で優勝した。
そのままT中は都大会に進み、なんと決勝まで進んでいた。

都大会決勝は 代々木第2体育館というとてつもなく大きな会場で行われる。
私は友人と電車に乗り、その試合をというか、健一君の雄姿を見に行った。
T中学の相手はJ中学。同じ区の学校だ。
友人のお目当てはこのJ中学だったので二人でワクワクしながら試合会場へ向かった。

そこで目にした光景・・・

代々木第2体育館は実業団の選手がやるような体育館。
一度NBAの試合を見たことがある。
オレンジ色のスポットライトがまぶしく、中央のコートを照らしている。
客席もいっぱい。
こんなとこで出来るなんて‥‥すごい。

試合前、決勝戦に出る選手達がいた。
まわりにはたくさんの女子、女子。
キャーキャー言って、選手をカメラで撮っていた。
(健一くんだ!)
私はそこに混じってキャーキヤーいうというよりは人気の凄さにあっけにとられていた。
確かにT中学はイケメン軍団!人気が出るのもわかる。相手のJ中はイケメンというよりもスラムダンクに出てくるような体が大きく存在感バリバリ軍団!

彼らは完全なアイドルになっていた。
それが嬉しくも遠くに行ってしまうような感覚があった。
でも、私が見つけたイケメンは、2年後こんなに有名人になっている。
私の目に狂いはなかった。
あの衝撃はイケメンすぎるからだったんだ。

年に数回会える他校のアイドル・・・ 
その時の私にとって彼はただそういう存在だった。
なぜ、運命を感じるなんて思ったのかわからないまま・・・



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