魂が叫んでいるのに
■引退 会えない覚悟

とうとう部活引退の時が来た。
部活を引退する・・・・

それは他校の彼と会えなくなることを意味していた。
お互いバスケット以外では会うことはない。

寂しさを感じながらも仕方がない・・・と。

引退後、男子バスケ部の カズヤがなぜか、T中の子と友好を深めていた。
(カズヤ!!良くやった!!)カズヤはその後もキーマンになる。
そしてそこから電話番号をゲットしたのだった!!
当時は携帯もポケベルもない時代・・・。家の電話番号だ。

電話番号を手に悶々とする日々。
この時、今のようにLINEがあったらこんなに悩んでいなかったと思う。

バスケ部の友人といつ電話しようかといいながらも出来ないでいた。
そりゃ、他校の知らない女子から電話がかかってきたって困るだろうし、
自分にも自信がない! 可愛いわけではない!こんな私からかかってきたって・・・
そんなネガティブな感情が、完全に電話する勇気を奪っていた。

言っておくが、この時も重い『好き』という感情ではなく、ジャニーズに恋する
女子中学生といったぐらいの感情である。
実際、付き合っていた人もいたので、かなり気が多い子だった。
それでも、なぜかあの衝撃が忘れられず、彼を追い求めていた。

この頃 両親が離婚した・・・ 私は母との暮らしを選んだ。

中3 1月・・・
高校受験が目の前に迫っていた。 付き合っていた彼とは別れていた。
希望高校が決まり、願書を出した。
私は家から1時間くらいの都心の高校を希望した。友達も誰もいかない高校。
1からまた始めてみたかったのだ。
彼はどこに行くんだろー?

その時、カズヤから情報が入った。
カズヤ「的場健一は大江高校に行くみたいだぜ!!」
私「それ、本当なの? 単なるうわさとかで間違ってない?」
カズヤ「本人から聞いてるから確かだぜ!」

(大江高校かぁー 。 えーどうしよう。 大江高校行ったらクラスメイトになれるじゃん!)
(でも、願書出しちゃったし。 もう遅いか。。。)

調べていたら、願書の出し直しが出来ることが分かった。
2月2日 この日に願書を出し直し申請を出せば、志望校が変えられる。

(どうしよう・・ 変えようかな・・・)
家からはそんなに遠くはないし、偏差値も志望校よりも下だ。合格できる可能性はある。
本気で悩んだ。

しかし、ここで大きな出来事が起こった。
母から「2月2日 悪いけど、離婚の為家庭裁判所に行かなきゃならないから 学校休んでね。」と。
えっ?? 裁判所?? 何で?

えーーーーーつ!!

母に男の為に願書出しなおしたいなんて言えないし。
なんていうタイミングなのよ。
結局、大江高校に行くことはあきらめた。

受験が終わった ある日 友人のカンナと健一君に電話をかける決心をした。
(もう最後だし、中学の思い出にしよう!! 二度と会うこともない。)
友人に家に来てもらった。

「よし、かけるよ!!」

ドキドキが止まらない!!
ひとつ、ひとつダイヤルを押す。

ガチャツ! 切る。

「やっぱり ドキドキして無理ぃー」
「何言ってんの。 決めたんでしょ! もう会えないんだよ。」友人カンナが言う。
「そうだよね。よし、頑張る!!」

口から心臓が飛び出しそうだ。

プルプルプル・・・・・・

呼び出し音がなる。

「もしもし、的場です」

(け、健一くんだぁー)

「もしもし、あのー、A中の 春野っていいます。 健一君いますか?」

「俺ですけど・・・」
ど、どうしよぉー 手汗ビッショリ。

「あのー、カズヤから電話番号聞いて・・・・。 私の事わかります?」

「知らないけど・・・」 不機嫌そうだ。

そりゃそうだ。 どこのやつか知らない女が勝手に電話番号聞いてかけてくるんだもん。
たぶん、10分くらいだったと思う。大江高校に行くこと、部活中の話などを聞き、電話を切った・・・・。 終始健一君は不機嫌そうだった。
それでも私は 電話で話せた満足感でいっぱいだった。

これでひとつのときめきともおさらばか。

中学を卒業した。

結局あの運命を感じたのは何だったんだろー?一目惚れにしては衝撃的だったな。
でも楽しい中学時代だった。
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